被験者の安全確保・人権保護を第一に考えるために、臨床研究、医薬品承認審査という「審査する側、される側」双方の経験をもつ筆者が、臨床研究・治験に関する自身の見解をまとめ、今後の「産・官・学」のより良いあり方と、実態をともなった医薬品開発に向けた一つの道筋を提言。 「なぜ日本は、“治験はGCP”、“臨床研究は倫理指針”のダブルスタンダードになったのか?」など治験、臨床研究、医師主導治験の複雑に絡み合う要因を国内外の歴史的背景をふまえて独自の視点で考察。 また、GCP省令と倫理指針の各項目を表形式で比較しながら、それぞれの特徴と相違点をわかりやすく整理するとともに、新たに発出された「人を対象とする医学系研究に関する指針」(統合指針)について、従前の倫理指針からの変更点および考え方などを詳細に解説。 医療機関・研究機関関係者、開発関係者など「臨床研究」や「治験」に携わる方が読んでおきたい一冊。 《目次》 第1章 患者の人権をめぐる歴史 第2章 臨床研究に関する倫理指針 第3章 競争原理の中に立つ製薬企業と医療倫理に忍び寄る危機 ~利潤追求の中でのルール作り~ 第4章 GCP省令が定める臨床試験(治験) 第5章 医師主導治験とGCP省令 第6章 変わり始めた倫理指針 第7章 明日の医薬品開発につなげるために
日本の医薬品開発をとり巻く環境にはたくさんの課題がある。しかも地理的にも、歴史的にもそれらの課題は根深い。 このような現状において、医薬品開発に携わる者に求められることは、一見、回り道ではあるが、医薬品をとり巻く背景を理解し、むしろ、臨床研究、治験、そして医師主導治験という制度の異同を整理することである。 その方がより早く、大学や研究施設、さらには日本の創薬産業が新たな未来を切り拓くと筆者は考える。それは被験者の安全確保と人権保護にもつながる。 本書は、そのうえで医療者、研究者、製薬企業が魅力ある成果を上げる一助となればと願うものである。 本書は医薬品にまつわる倫理について述べているものではない。 一見、複雑に思える「臨床研究に関する指針」「GCP省令」「医師主導治験」、そして、これらの課題を受けて発布された「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を要領よく整理するための参考書として捉えていただければ幸いである。 そして被験者の人権保護と安全保障が充実し、新たな医療の発展につながることになればと願うものである。 〈序章より抜粋〉 《著者紹介》 牧江 俊雄(まきえ としお) 医学博士 ●主な略歴 九州大学病院心療内科入局 九州大学病院医療情報部(現 メディカル・インフォメーションセンター) Medical Univ. of South Carolina 独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 免疫感染症科 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 新薬審査第一部 主任専門員 大阪大学大学院医学研究科 早期・探索的臨床試験拠点 特任教授 成田空港検疫所 情報管理室室長(現職)
【著者】牧江 俊雄(’15.11)
【判型・頁】四六判・163頁
【定価】2,500円+税
ISBN:978-4-8408-1327-3 C3047